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特別寄稿「平成30年介護保険制度改正の方向性」

平成30年介護保険法改正の方向性

平成30年の介護保険制度改正について、社会保障審議会介護保険部会(以下、介護保険部会)が平成28年2月17日の第55回から始まり、12月9日の第70回まで約10ヵ月にわたり16回の議論を重ねてきました。

介護保険部会は、第70回をもって今年(29年)の通常国会に提出する介護保険法改正の法案に対する意見をとりまとめた、「介護保険制度の見直しに関する意見」として厚生労働大臣に提出しました。

ちなみに、通常国会は1月中旬に召集され、会期が150日とされていますが、29年度予算案などの重要法案から順次審議されるので、介護保険改正法は会期の中盤から終盤になるでしょう。

では、ここでこれまでの介護保険部会の経過を簡単におさらいしておきましょう。

介護保険部会の開催日とテーマをまとめておきます。

  1. 平成28年2月17日(第55回)
    1. 介護分野の最近の動向等について
    2. 介護保険制度における所得指標の見直しについて
    この先の議論のテーマを確認しました。
  2. 平成28年3月25日(第56回)
    1. 在宅医療・介護の連携等の推進
    2. 慢性期の医療・介護ニーズに対応したサービスのあり方
    もっとも重要なテーマから始まりました。
  3. 平成28年4月22日(第57回)
    1. 地域の実情に応じたサービスの推進(保険者機能の強化等)
    2. その他
    地域の実情に即した保険者の機能をテーマとして集中的に審議しました。
  4. 平成28年5月25日(第58回)
    1. 地域支援事業・介護予防の推進
    2. その他
    前回に引き続き、地域に関するテーマでした。
  5. 平成28年6月3日(第59回)
    1. 介護人材の確保(生産性向上・業務効率化等)
    2. その他の課題1
  6. 平成28年7月20日(第60回)
    1. 軽度者への支援のあり方
    2. 福祉用具・住宅改修
    いよいよ軽度者について話し合われ、議論は真っ二つに割れました。
  7. 平成28年8月19日(第61回)
    1. 利用者負担
    2. 費用負担(総報酬割・調整交付金等)
  8. 平成28年8月31日(第62回)
    1. その他の課題2(被保険者の範囲)
    2. ニーズに応じたサービス内容の見直し
    結局、被保険者の範囲を広げることには消極的な意見が多く、またもや先送りのようです。
  9. 平成28年9月07日(第63回)
    1. 介護人材の確保(生産性向上・業務効率化等)
    2. 保険者の業務簡素化(要介護認定等)
    3. 認知症施策の推進
    もっと時間をかけて議論すべきテーマでした。
  10. 平成28年9月23日(第64回)
    1. 保険者等による地域分析と対応
    2. 介護保険総合データベースの活用
    3. サービス供給への関与の在り方
    4. ケアマネジメントのあり方
  11. 平成28年9月30日(第65回)
    1. 介護予防の推進
    2. 地域支援事業の推進
    3. ニーズに応じたサービス内容の見直し
    これで、9月は三回開催されました。
  12. 平成28年10月12日(第66回)
    1. 軽度者への支援のあり方
    2. 福祉用具・住宅改修
    3. その他
    第60回に続き、二巡目のテーマで議論しました。
  13. 平成28年10月19日(第67回)
    1. 利用者負担
    2. 費用負担
    第61回で議論したテーマをさらに論点を絞って話し合われましたが、意見は様々でした。
  14. 平成28年11月16日(第68回)
    1. 在宅医療・介護の連携等の推進
    2. その他
    第56回(3月25日)で議論したテーマを再び取り上げました。
  15. 平成28年11月25日(第69回)
    1. とりまとめに向けた議論
    2. その他
    最終的なとりまとめの議論でした。
  16. 平成28年12月9日(第70回)
    1. 介護保険制度の見直しに関する意見(案)について
    2. その他
    とりまとめの最終案に対する委員の意見を出し合い、案に対する修正もなく決定しました。
    その後、12月28日に、「介護保険制度の見直しに関する意見」を正式に厚生労働大臣に提出しました。

【法改正の主なポイント】

1.在宅医療と介護の連携強化

次期改正法では、平成27年に施行した『地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律』をさらに推し進めることになり、 在宅医療と介護の連携を強力に求める施策が出るのではないかではないかと考えられます。

医療との連携

特に病院から退院する際の連携は重要であり、居宅介護支援にある「退院退所加算」や「入院時情報連携加算」などは、 まさに「医療と連携しなさい」と言わんばかりの露骨な表現の加算です。 本来は、このような加算がなくても医療と介護の連携が行われることが望ましいのでしょうが、加算による効果で連携を促進する狙いだと言えます。 ケアマネジャーにとっては、退院、退所してからは在宅医療や訪問看護などとの連携も必要になります。 「緊急時等居宅カンファレンス加算」は、 「病院又は診療所の求めにより、当該病院又は診療所の医師又は看護師等と共に利用者の居宅を訪問し、カンファレンスを行い、 必要に応じて、居宅サービス又は地域密着型サービスの利用に関する調整を行った場合に算定する。」となっているので、 これもかなり強力に連携を求めている証です。

平成30年の報酬改定でも、さらに同種の加算が出てくるのではないかと思われます。

2.保険者の機能強化と地域支援事業・介護予防の推進

保険者の機能強化については、①保険者による地域分析と対応、②サービス供給の関与の在り方、③ケアマネジメントの在り方の三項目が挙げられています。

①は、保険者による地域分析はこれまで以上にきめ細かく行い、介護保険事業計画に反映させて計画の精度を高めることを求められています。

介護事業者は、これまで以上にこの介護保険事業計画を十分に理解しておくことが重要になります。 知らない、わからないでは済まされないので、事業所全体で計画の内容を理解するようにしましょう。

②は、特に地域密着型サービスの供給量を想定しているので、 国が推進している定期巡回・随時対応型訪問介護・看護や看護小規模多機能型居宅介護のサービス供給量を増やすためにどのような施策が考えられるか検討していくようです。

当然のことですが、地域密着型サービスを中心に介護事業者は医療と連携する機会が増えます。

主治医、かかりつけ医以外にかかりつけ薬局の存在も見逃さないようにしましょう。

③は、現在、適切なケアマネジメントの推進を図るための市町村の取組として、 ケアプラン点検や、地域ケア会議における個別ケースの検討等が行われており、これらの取組を通じてケアマネジャーへの支援を行いながら、 結果はどうであれ地域のケアマネジメントの向上を図っています。 今後、ケアプランの点検を強化したり、地域ケア会議の開催頻度を高めていくことになるでしょう。

また、地域支援事業や介護予防事業を推進していくためにも保険者の機能強化は避けて通れませんので、 地域包括支援センターの役割もこれまで以上に重要になり、業務量も相当増えるでしょう。 ケアプランの点検によって、計画に位置付けられた個々の介護サービスの計画やサービス提供状況の把握状況も自己点検しておく必要があります。

3.介護人材の確保

介護保険部会では、介護人材の確保に付随して生産性向上・業務効率化等も一体的に検討しています。特に生産性向上には報酬改定に深く関わる可能性があります。 これまでにもサービス提供時間の短縮が繰り返されてきましたので、次期法改正・報酬改定でも報酬体系の再編があるかも知れません。

介護人材の不足については、様々な統計や予測データなどから、将来にわたって不足状態が続くことは明白です。 介護人材が充足することは考え難いし、仮に充足すれば介護給付の抑制がままならないということになります。

介護人材の確保について、具体的な施策が示せていない現状で、介護保険部会の資料には、 『介護人材の類型化・機能分化についての検討が進められているところであるが、地域の高齢者を「介護助手」として活用することで介護の担い手を増やし、 専門性のある介護職には 専門分野でその能力を発揮してもらう取組も行われている。』
と書かれていることから、元気な高齢者にボランティア活動に参加してもらうという不確実な方策を検討しています。 やってみないとわからないけれど、やってみようというようにも受け取れます。

4.軽度者への支援の在り方

軽度者とは、具体的な定義があるのでしょうか。 介護保険部会第60回の資料には「介護保険制度においては、軽度者について要支援・要介護度の区分による定義は設けていない」とありますが、 昨年6月13日に公表された「平成26年度介護保険事業状況報告(年報)」には、 「軽度(要支援1~要介護2)の認定者が約65%を占めている」と明記されているので、 厚生労働省の定義は要介護2までを「軽度者」としていることがわかります。

これまでに財務省の提言などでも中重度者を介護保険サービスの対象にすべきであるという旨の方向性が示されていますが、厚生労働省がそれを否定したことがありません。

次期法改正かその次には、軽度者への支援の在り方が大きく変わることは想定しておく必要があります。 介護事業者はそのための準備をしておかなければなりません。

5.利用者負担

すでに平成27年8月から一部の利用者の負担が一割から二割になりました。 私が傍聴した第61回介護保険部会(平成28年8月19日開催)では、二割負担の対象を全利用者へ拡大することを前提とした資料を示して議論を進めている印象がありました。

今後の議論は

仮に利用者負担を二割に引き上げることになると、現在、二割負担の利用者は三割の負担となる可能性があります

また、第61回介護保険部会では、一部の委員から居宅介護支援の利用者負担導入にも言及し、 利用者負担の在り方に対する考え方も大きく舵を切ることになりそうな気配を感じました。

過去三回の法改正時の介護保険部会の開催頻度や部会の議題を振り返ると、 秋までは個別テーマの検討を予定通り行い、11月頃には介護保険部会としての「意見」の中間整理が行なわれました。 その後、年末に「介護保険制度の見直しに関する意見(案)」をまとめて厚生労働大臣に提出しました。

しかし、昨年末に解散総選挙の動きが慌ただしくなり、選挙への影響などを意識して政府与党が大幅な制度改正を回避するのではないかと思える内容に変わってきました。

少なくとも利用者負担については、当初の二割負担は先送りし、現役並みの所得がある利用者への負担増を求めるに留まりそうです。

なお、12月28日に公表された「介護保険制度の見直しに関する意見」をみると、これから本格的に議論が始まる社会保障審議会介護保険給付費分科会に委ねたテーマがあります。

1つは、居宅介護支援事業所の運営基準等の見直し検討(管理者の役割、公正中立の確保等)であり、報酬改定時に検討することを求めています。

2つ目は、軽度者への支援のあり方として、生活援助を中心にサービス提供を行う場合の人員基準の見直し等について検討することです。 これも介護報酬改定時に検討するよう求めています。同時に各種給付の総合事業への移行については、介護予防訪問介護等の移行の状況等の把握し、検証を行った上で、検討することも求めています。

従って、制度改正の方向性が概ね固まった後に、具体的な報酬改定の議論が始まり、平成30年4月以降の状況が見えてきます。

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