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有限会社業務改善創研のコラム(介護コンサルタント福岡浩)

介護コンサルタント福岡浩のコラム

介護報酬のトップ入れ替わり

介護報酬のサービス種類別費用額を見ていると、 介護保険制度が施行されてからもっとも費用額が伸長したのは訪問介護であることが改めて確認できます。 当初は長時間サービスや通院介助の院内待ち時間も給付されていましたから、無駄に使われたことも一因でしょう。 また、介護保険制度が始まった当初から、ホームヘルパーを家政婦代わりに大いに利用しようとする風潮があったことも事実です。

さて、ある時期に訪問介護を追い抜き、介護報酬の費用額が居宅サービス部門でトップになったのは通所介護(デイサービス)です。 厚生労働省が公表した直近の平成23年3月審査分の費用額は、79,792百万円です。 これに対して、訪問介護は、同51,366百万円で284億2600万円の差があります。

通所介護より訪問介護の介護報酬の費用額が上回っていたのは、平成16年4月審査分で確認できます。 訪問介護59,132百万円、通所介護55,068百万円でした。 また、その半年後の平成16年10月審査分では訪問介護59,136百万円、通所介護58,943百万円で、かなり拮抗する状況になりました。 その後、さらに半年後の平成17年4月審査分では訪問介護61,128百万円、通所介護61,994百万円で、 僅かながら通所介護が訪問介護をかわしてトップの座に着きました。

上記の数値は厚生労働省がまとめた毎月々の介護報酬サービス種類別費用額の全国集計です。 勿論、保険者ごとの集計も行われていますので、各区市町村でも同様の集計結果を見ることが出来るはずです。 例えば、横浜市は居宅サービス部門の介護報酬の費用額トップが入れ替わるのは、全国集計に見るトップ入れ替わりから3年以上遅れて、 平成20年9月審査分で確認できます。 横浜市の全市集計によると、訪問介護の介護報酬の費用額が1,474,449千円に対し、通所介護のそれは、1,533,786千円となり、5,933万7千円上回り、 単月で首位の座を奪われた訪問介護はその後も介護報酬の費用額の伸びが鈍化していきます。

厚生労働省の全国集計の結果では平成17年4月審査分で首位逆転があり、 横浜市では遅れること3年余り後の平成20年9月審査分で初めてトップが入れ替わりました。 この時間差はなんだろかという疑問と同時に、そもそも訪問介護の介護報酬が頭打ちになり、 代わって通所介護の介護報酬が伸びてきた背景はどうなっているのだろうか。

まずは、最初の疑問を考えてみましょう。平成17年4月審査分の全国集計の結果、通所介護の介護報酬の費用額が、 居宅サービスのトップになったのはなぜだろうか。 様々な見方が出来ますが、地方の高齢化が一段と進んで高齢者世帯が増え、 訪問介護のような細切れ時間のサービスの必要性が薄れていったと考えることが出来ます。 代わりに、ほぼ1日中要介護高齢者を家まで迎えに来てくれ預かってくれて、また、家まで送り届けてくれるサービスだとわかって、 週に2日程度は利用したいというニーズが高まったのでしょう。 市町村にある特別養護老人ホームに併設されているデイサービスの利用が高まり、 その後に多種多様なデイサービスのニーズも出てきたところで、多くの民間事業者が少人数のデイサービスを開業するようになり、 一日利用定員30名、40名の特別養護老人ホーム併設型デイサービスと、 一日利用定員10名、15名程度の小規模で少人数のデイサービスを使い分けるようになり、 次第に通所介護の介護給付費が伸びたのではないかと考えられます。

以上のような現象が少し遅れて都市部にも波及してきたのは、高齢化の進行が地方より遅れていることと関係していると推測できます。 従って、全国集計よりも横浜市が3年余りも遅れて訪問介護を追い越しトップの座に着いた通所介護の介護給付費の費用額は、その後も伸び続けています。

ところで、訪問介護サービスの介護給付費の費用額が頭打ちになっている状況をどう説明したらよいだろうかと考えました。 事業を運営する側から考えると、デイサービスのように初期投資がそれほどかからない訪問介護事業は、 ちょっとした現場経験があれば誰でも、また、全くの素人でも安易に参入ができるように思えてしまいます。 訪問介護事業者が増えて、そこで働くホームヘルパーの数が増えていないから、 事業者同士の取り合いになり、ホームヘルパーが確保できなくて、サービスの依頼に応えられない状況が続いたことも原因の一つではないでしょうか。 訪問介護のニーズはあったが、要望に応えられないから要介護者は必然的に他のサービスを代替的に利用するようになったのではないか。 同時に細切れ時間のサービスよりもデイサービスに1日行った方がお得感があるのでしょう。 居宅サービス計画(ケアプラン)を作成するケマネジャーの立場から考えれば、 他者との交流で認知症の予防、引きこもり予防にもなるデイサービスは打って付だと考えたようです。

なお、横浜市で訪問介護サービスを利用する要介護高齢者の月の自己負担額を含む平均利用額は、おおよそ5万円に満たない、 訪問介護事業所が50名の利用者を確保していても月額総売上額は250万円程度です。 しかも、50名の利用者がいれば、非常勤の訪問介護員(ホームヘルパー)は最低でも20名以上いないと運営が厳しくなります。 一方、1日利用定員15名規模の通所介護(デイサービス)で、同じ50名の利用者を確保し、利用者一人当たり月に8回の利用があれば、 1回の利用料を9,000円として9,000円×8回×50名=360万円の月額総売上額が見込めます。 勿論、経費等の支出部分に違いがありますので、一概に比較ができない側面もあります。

さらに職員の雇用状況から見れば、訪問介護事業に必要な訪問介護員には資格が必要です。 介護福祉士または訪問介護員養成研修2級課程修了者となっていますが、通所介護(デイサービス)の介護職員の場合には、特に資格を求めていません。 その代わり、看護職員や生活相談員の配置を求められていますから、看護師や准看護士、介護福祉士などの資格者の雇用が必須となります。

訪問介護、通所介護のどちらが事業として参入し易いかは何とも言えませんが、訪問介護の需要が鈍化しているにもかかわらず、 訪問介護事業所を立ち上げる事業者は後を絶たない。しかもすぐに止める事業所も多くなっています。 通所介護についても、すでに供給過多になっている地域も増えてきているのに、相変わらずデイサービスを開業する事業者がいます。 新規参入事業者は後発のデメリットをどう考えているのか全く理解できませんが、何かしらの勝算があるのでしょうか。 先発事業者よりも優れている点があると確信しているのでしょうか。

また、すでに事業を継続してきている訪問介護事業者がこの先も継続性を担保するには、経営環境の変化に対応していくしかありません。 介護保険法改正や介護給付費改定による外部環境の変化は定期的に行われるので、その都度柔軟に対応していく必要に迫られます。

2011年5月26日掲載

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