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有限会社業務改善創研のコラム(介護コンサルタント福岡浩)

介護コンサルタント福岡浩のコラム

介護保険制度に導入された幻の「競争原理」

1.厚生労働省の幻想だった「競争原理」?

介護保険制度は、その施行以前の措置制度から契約によるサービス提供へと大きく変わりました。 介護保険制度施行により、利用者が自由に介護サービスを選べるようにするため、「利用者の選択権」や「利用者の自己決定権」などが謳われ、 介護事業者は「選ばれる事業者」を目指すことを求められるようになりました。 国は、「選ばれる介護事業者」を目指せば、必然的に「競争原理」が働くと考え、 それによってより良い介護サービスが提供できると宣伝してきました。 しかし、本当に「競争原理」が働いているだろうかと疑問に思いながらこの10年間を振り返ると、 検証出来得る正確なデータがないので、その是非を問うことはなかなか難しい。

異業種の業界との比較も一概にできませんが、一般的に様々な異業種で「競争」と言えば、価格の競争であり、 製品・サービスの品質の競争、顧客サービス・顧客対応力の競争等々、競争すべき項目がいくつかあります。 最近では、世界的な脱化石燃料化が進行する中で原油価格の乱高下とハイブリットカーの普及などにより、 市中のガソリンスタンド(GS)の撤退が目立ちます。 激しい競争に打ち勝って最後まで生き残ってもその先の展望が見えない状況は変わりません。 前述したように価格の競争が熾烈を極めれば、大量仕入れが可能な大手系列のGSが有利になり、何とか生き残ります。 価格の競争は、セルフサービスのGSを出現させ、ポイントカードで様々な特典を用意し顧客を引き付けようとしました。

介護保険サービスを提供する事業者間には、基本的に価格の競争はありません。 介護報酬は言わば公定価格ですから、事業者が個々にサービス提供価格を決められないのです。 その意味では、一昔前のタクシー業界と同じような条件だと言えます。

話は飛びますが、最近、消費者金融の先駆け的存在だった某サラ金会社が倒産しました。 テレビや新聞の報道を要約すれば、法律の改正により過払い金利の返還を求められる訴訟件数が急増し、 その対応や資金調達が手詰まり状態になったために倒産したということです。 いわゆる経営の外的環境が大きく変化したことによる倒産です。 生き残った他のサラ金会社は、ほとんどが大手都市銀行の傘下入りで倒産の危機を回避しました。 経営環境の変化を読み間違えた場合とその変化を楽観した場合の対照的な結果です。

介護保険制度下で介護ビジネスを営む介護事業者も、 5年に一度の法改正や3年ごとの介護給付費の見直しなどで経営環境が変化することが今までもあり、 これからもあります。 常に経営状態の悪化や倒産のリスクがあり、 このように事業経営が外的環境の変化にさらされ続けたり、 事実上の価格競争がない状態では、「競争原理」は機能しないと考えられます。 しかし、介護保険制度は「措置制度から契約による社会保険制度へ」という謳い文句とともに、 利用者の選択権や自己決定権の保障を掲げ、「競争原理」が機能して、良質な介護サービスが選べるようになると言われてきました。 残念ながら、現在そのような状況にはなっていません。

第三者的視点で介護保険制度の「競争原理」を考えると、介護保険法という細かいルール(規制)の下では、 サービス提供価格も決められているので自由な競争は成立しない。 要するに元来「競争原理」を持ち込める土壌ではなかったのです。 そもそも自由主義経済の市場では、最低限の競争ルール(法律など)の下で、企業が自由に競争することによって、 顧客が最大の利益を得られなければなりません。 介護保険制度は、国が運営する保険制度であり、 公的なサービスを民間の介護事業者が提供するという仕組みなので、介護事業者による積極的かつ自主的な競争状態は望めません。

2.「競争原理」がダメなら次は何?

介護事業者にとって介護報酬(サービス提供価格)が同じならば、サービスの質を高めようと努力する介護事業者はなかなか出てきません。 そうなると、競争状態を作り直す必要があります。 それが介護給付費の見直しにより、昨年(21年度)から様々な理由をつけて誕生した事業所加算等々です。 それは、サービスの質を高められなかったことを反省して、編み出された苦肉の策でもあります。 事実上、「競争原理」が機能していなかったことを認めたものだという見方ができます。 しかし、この複雑怪奇な加算群は、その多くが利用者の負担に跳ね返るものであり、事業者によっては加算を請求しない場合もあります。 従って、「競争原理」が機能しないどころか、介護事業者間の利用者争奪戦に発展しサービスの質の競争もままならない状態になっています。 それは、何を意味しているのかと言えば、21年度に介護報酬見直しで改定された複雑怪奇な加算体系は、 介護事業者数を減らして都道府県や保険者が管理しやすくなるようにするためのものだったという印象を強く受けます。 多過ぎる介護事業者を管理可能な数にすれば、「競争原理」が機能しなくても、 指導監査を徹底してサービスの質を高められると考えているのではないでしょうか。

もうひとつ、初めから「競争原理」を目指すことすらできなかったのが地方です。 地方の市町村や過疎化している地域では介護事業者そのものが少ないため、特定の事業者の独占に近い状態です。 介護保険制度の理念である「利用者の選択権」や「自己決定権」が絵に描いた餅になっています。 また、都市部には介護事業者が多いとはいっても、人材確保の困難が解消されていないために、サービスの質も量も改善する方向性が見えません。

かくして「競争原理」は、公的保険制度では機能し難い、いや機能しないことがはっきりしてしまったと言えます。 介護保険制度にとって、本当に「競争原理」が必要なのか、もし必要ならば機能する仕組み、ルールの見直しをしなければなりません。 特定事業所加算という「馬にニンジン」方式では、 真の「競争原理」とは言えません。 競争優位性を確保する努力を事業者から引き出すルールや仕組みが望まれます。

しかし、「競争原理」が十分に機能していなくても、勿論、少数ながら良質な介護サービスを提供しようとしている介護事業者は存在します。 他事業者との差別化を打ち出し、競争優位性を維持する運営の仕組みを創り上げる努力は、 要介護高齢者を顧客とする介護事業経営者に求められて当然です。 一方で公的保険制度だから請求すれば介護報酬が得られるという安易な発想で事業を運営している介護事業者もいます。

3.次期法改正で何が変わるか

平成24年介護保険改正法施行で何が変わるか。 全体的には財政の抑制をターゲットとしているので、介護給付費の対象範囲を縮小して、利用量の抑制と同時に介護事業者を減らす方向性が考えられます。 在院日数や治療期間を減らした診療報酬抑制策と同じやり方が見えてきます。

簡単に言えば、要介護高齢者と介護事業者を篩にかける仕組みに変わる可能性が大いにあるということです。

2010年10月28日掲載

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