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2008年3月のコラム
「介護事業におけるマーケットインの発想」

今回は、少し難しい話になるかもしれません。
「介護事業は言わずと知れたサービス業だ」と言うと、首を傾げて顔をしかめる介護事業関係者もいますが、 要介護者は介護サービスを必要とするお客様なのです。 そうだとすれば、そのお客様がどこにどれくらいいるかを知らないでよいのだろうか。 これから先、お客様となり得る潜在的顧客が自社事業所の商圏にどのくらいいるのでしょうか。 また、同業他社がどのくらい存在しているのでしょうか? そんなことは知らなくとも利用者はいるし、これからも増え続けるから大丈夫だと思い込んでいるのでしょうか?

話は変わりますが、ケアマネジャーに求められていることの一つに、「地域の社会資源の把握」という業務があります。 介護サービスを利用する要介護高齢者に必要な地域の社会資源、すなわち介護サービスをはじめする、 様々な福祉サービス、医療、保健等々のサービスであり、 ボランティア団体などが提供する様々なサービスも該当するでしょう。 それらの状況を個々に把握し利用者の要介護状態や本人、家族の要望、希望に叶うサービスを選択し、 紹介して利用していただくよう援助するのが、ケアマネジャーの役割だとされています。 このような一連の活動そのものが、マーケット(市場、商圏)の状況を把握することに他なりません。 「マーケットイン」とは、自社事業所の商圏と位置づけている市場に近づいて、 より顧客のニーズやその変化に対応しようとする発想です。

 その逆に「プロダクトアウト」という言葉がありますが、製造業では、製造現場から市場に向けて、 「こんなに良い製品だからきっと消費者は買うだろう」という発想で、 モノづくりを行なっていた結果、製造現場や商品開発部門中心の販売戦略が優先されてきた時代がありました。 今でもその名残がある業界もあるかもしれません。

この考え方をそのまま介護業界に当てはめれば、施設系の介護会社(有料老人ホームやグループホームなど)、 社会福祉法人等(特別養護老人ホームなど)で陥りやすい現象かも知れません。 「これだけの最新設備と高品質なサービスなら、入居する要介護者がたくさん来るだろう」と言っていて、 意外にも集客がはかどらないという話はよく聞きます。 これがまさに介護事業における「プロダクトアウト」志向に陥った状態なのでしょう。 どんなに最新の入浴設備があっても、どんなに優秀な介護スタッフを取り揃えていても、 入居する方がいなければ、意味がありません。 特に有料老人ホームやグループホームなどでは、地域によっては空室が続く施設もあります。 これはもしかすると、「マーケットイン」の発想が足りないのか、ほとんどないのではないでしょうか。

実は、介護事業にもマーケティングの考え方が必要であると感じている人は想像以上に少ないかもしれません。 いや、「そんなの関係ねぇ!」と思っているでしょう。 マーケティングとは、平たく言えば、企業などが行う活動のうち「顧客が真に求める商品・サービスを作り、 届ける活動」全体を表す概念である。ということは、 「要介護高齢者が真に求めている介護サービスを計画し提供する活動」が介護事業のマーケティングです。

マーケティングの入門書に必ずと言ってよいほど書かれているのは、「3C」です。
Customer(顧客)、Company(会社)、Competitor(競合他社)の把握は、マーケティングに不可欠です。 顧客は要介護高齢者やその家族であり、会社は、介護事業会社とその事業所です。 競合他社とは、商圏に散在する同業の事業者です。 そもそも、要介護高齢者が求めている介護サービスとは、インフォーマルを含めれば様々なサービスが考えられます。 自社事業所で対応でないサービスの方が圧倒的に多いはずですが、 そういう情報が十分に把握されていないのが現状です。 それでいて、自社事業所が提供できるサービスのみを提供しようとしても顧客は納得しません。 自社で提供できる介護サービスとともに地域の情報も提供する活動が必要です。 その情報は正確かつ最新であることは言うまでもありません。 それには、顧客である要介護高齢者とその家族を理解し、 自社事業所が顧客に応えられる(提供できる)介護サービスが何であり、どの程度の質なのか、 分かりやすく言えば、自ら提供する介護サービスを評価しておくことです。 また、地域の情報を常に収集し分析しなければなりません。 さらに、自社事業所が提供できる介護サービスは、同業他社ではどのような状況なのか、 顧客の評判はどうなのか、今後の事業展開の方向性はどうなのか、を調べておくことは無駄ではありません。

介護事業、とりわけ在宅介護サービスでは、 居宅介護支援事業、訪問介護や通所介護等々については、 その事業所の管理者が商圏であるその地域について、どんなことでも知っている状態が望ましいでしょう。 あるケアマネジャーさんは、「○△美容室は外出できない高齢者のために出張サービスを行なっている」とか、 「□×惣菜店では、毎週水曜日に、65歳以上のお年寄りのために2割引にしている」といった情報を常に収集しています。

マーケットイン、それは、自社の商圏である地域に足を踏み入れて、日々変化する状況を肌で感じながら、 最新の地域情報を収集、分析してストックし必要に応じて顧客である要介護高齢者に提供することです。 そして、マーケティング活動を業務の中に落とし込んで活用していれば、 次第に顧客の支持を集めて地域ナンバーワン、 いいえ、地域オンリーワンの介護事業者になるのではないでしょうか。

2008年2月26日掲載

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