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2006年10月のコラム:
介護業界もM&A時代に突入か?!

介護保険制度が施行されて6年半になりますが、3年に一度の「制度の見直し」が二回、5年に一度の「法改正」もすでに終わりました。 そして、今年4月から施行された「介護サービス情報の公表」制度や来年度に変わる「指導・監査」の指針から読み取れるのは、介護事業者が提供するサービスの質を担保する仕組みを着々と整備していることです。

これからは、経営者の経営能力が益々問われるようになり、「介護サービス情報の公表」における調査情報項目を一つ一つ見れば、それらを達成する意欲さえない介護事業経営者が、早くも撤退を決断し始めています。 事業規模の大小は別として、事業撤退を決意する時には、営業権の譲渡や吸収合併などを考えるのは当然です。

「M&A」という言葉を頻繁に耳にするようになったのは、ここ数年ですが、介護業界には無縁だと思っていた方も多いはずです。 しかし、新聞やテレビのニュースで取り上げられるような大手企業のM&Aや合併、経営統合とは違い、身近な介護事業会社のM&Aが徐々に進行しています。

さて、本題に入る前に「M&A」とはどういう意味なのか、確認のためにおさらいしておきましょう。 「M&A」とは、 Merger&Acquisitionの略で、Mergerは合併、Acquisitionは、取得とか買収という意味だそうです。 従って、「吸収合併」という意味で「M&A」と言う言葉が使われているようです。 王子製紙が北越製紙を買収しようとしたり、アオキとコナカがフタタを取り合ったり、また、ニッポン放送株をめぐるライブドアとフジテレビの攻防など、ここ数年でも企業買収の話題は尽きません。

しかし、欧米では当たり前のように行われる「M&A」も、日本では感情的になかなか馴染まない側面もあります。 事業や会社そのものを売却する意思がないのに、突然に予想外の会社から買収を持ちかけられれば、会社の独自性を守るためにも対抗手段を講じることになります。

話は介護業界に戻りますが、最近、関東一円に事業展開していた有料老人ホーム「桜湯園」のブランドで有名な日本シルバーサービス㈱は、7月3日にグッドウィルの傘下になり、コムスンと統合されることが決まっています。 これは、明らかに統合ではなく、吸収合併ですが、公式には統合してコムスンとのシナジー効果を高めると発表しています。

また、ニチイ学館でも、介護保険制度施行前後から中堅の介護関連会社を吸収合併したり、子会社化してきました。

前述したように今年4月から施行された「介護サービス情報の公表」制度や来年度に変わる「指導・監査」などが、その効果を発揮するようになると、現在の介護事業者の二、三割はドロップアウトするだろうという見方もあり、それは厚生労働省老健局の本音でもありそうです。 弱者である要介護高齢者に介護サービスを提供する介護事業者の経営基盤が不安定では、制度そのものの不安材料が解消しないという考えがあるとすれば、事業運営に不安感がある中小零細の介護事業者が少しでも整理されることを目指すのではないでしょうか。

この時に、中小零細の介護事業者が事業継続を断念すれば、必然的にM&Aが現実のものとなります。 すでに「介護サービス情報の公表」の調査を受けた介護事業経営者の中には、調査項目の文言を読んだだけで、「会社を畳みたくなった」と思った方も少なくないようです。

それが、この制度の裏の目的とも思えますが、これからは介護業界でも大手企業のM&Aのように、中小零細の介護事業者同士の合併やM&Aが増えると見て、M&Aコンサルタントも現れました。

私の知人にも介護・医療のM&A事業を手がけ始めた人がいますので、そういうニーズが現実にあるのだと実感しています。

一方で、社会福祉法人でも同様の動きがあるようです。 厚生労働省社会・援護局と全国社会福祉施設経営者協議会が設置した「社会福祉法人経営研究会」はこのほど、『社会福祉法人経営の現状と課題』と題する報告書をまとめました。 それによれば、補助金や措置費に依存してきた従来の社会福祉法人経営が、すでに立ち行かなくなってきている現状を認識し、これからは「自立・自律と責任が伴う法人経営」に変革することが必要だと説いています。

同時に経営能力の向上や介護の質を確保するために、社会福祉法人再編についても言及しています。 新規法人を増やすのではなく、既存法人の規模拡大を促し経営能力や介護の質が低い法人は、市場から退場させることで新陳代謝を図ろうという考え方が読み取れます。

自由経済の基本的システムである市場原理を導入しようとしていることがわかりますが、介護業界全般に再編の流れが加速化することも予想できます。

介護事業の継続を断念する場合に、サービス利用者である顧客に迷惑をかけず、従業員を解雇することなく、速やかに事業が引き継がれる方法の一つとして、M&Aや企業買収、経営権譲渡などが考えられます。 他の産業界と違い、介護業界では、M&Aという方法が理にかなっているかもしれません。

2006年9月30日掲載

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